お客様から『うちのお墓、ちょっと傾いているように見えるんだけど』というご相談をよく受けます。周りの他のお墓や建物と比べてどうでしょうか?目視でも分かるとなると、実際にかなり傾いていると言えます。
この間そうじに行った際によく見たらうちのお墓、周りの家に比べると傾いているように見えるんだけど。。。
石ってすごく重いから、沈下しちゃったのかもしれないですね。
もしかしたら地盤も関係しているかも!心配だからちょっと見てみましょう!
お墓が傾く傾向
基本的にはお墓の作りの特徴と関係するのですが、後ろ向きに沈み込んでしまう傾向があります。お墓全体の重さのバランスとして、石塔がある後ろ側に比重がかかっているからです。これらのようにどちらかが一方的に沈み込み、傾いて見える現象を『不同沈下』と言います。
もし、うちのお墓傾いている!と思ったら、次の2点、どちらに当てはまるかチェックしてみましょう。
① 石塔、その周りの外柵も傾いている ※基礎も割れていないかチェック!
墓所全体の地盤が弱いため比重の大きい方に傾いている可能性があります。
一度全て解体して基礎補強、もしくは基礎から組み立て直しになります。
基礎にヒビ割れがある場合は基礎からやり直しの可能性大。
② 石塔だけが傾いている
石塔の下にあるカロート(納骨室)が沈み込んでいます。
石塔を一度解体してカロートを補強、かさ上げ後に石塔組み立て直しになります。
カロートごとやり直しになる場合もあります。
いずれにせよ、傾きの原因を排除しない限りはまたすぐに再発してしまいますので慎重に対策を練りましょう。近年施工のお墓に関してはお墓の基礎もベタコンクリート(墓所内を全面的にコンクリートを打つ基礎)になっているため、不同沈下が起こりづらい仕様になっています。
軟弱地盤を見分けるヒント
では、地盤が弱いってどうやって見分けるのでしょう?現在は気になるお客様は施工前に別途地盤調査を行うこともできますが、いくつかのポイントがありますので自分のお墓の場所が当てはまるか確認して下さい。
- 昔は斜面だった所を盛り土した
- 昔は田畑だった所を盛り土した
- 昔は池や沼だった所を盛り土した
- お墓の周りに田んぼ、池や沼、湿地などがある
- 雨が降ると水捌けが良くない
地名と地盤の関係について
実は地名と地盤は密接な関係があると昔から言われています。水を多く含んだ地盤は必然的に柔らかく、又、液状化しやすいためです。
地名の漢字の部首に“水“に関するものが含まれている場合、それに当てはまります。
現在の風景は開発されて違っても、かつてはそこに水が存在したからです。
前橋市の一例:上泉・亀泉・池端・天川・川曲・川原・公田・下川など
みなさまのお住まいも地域もぜひ参考にしてみて下さい。
お墓の傾き 修繕工事の実例
それでは実際に、かつては池だった所のお墓を修繕した例をご紹介します。
今回は一度基礎まで全て解体して、丸太杭を打ち込み、その後ベタ基礎打設して復元といった工事です。
一般住宅の場合杭は金属製の鋼菅杭が使用されますが、墓地の場合は最大の難問があります。
通路が狭いため杭打ちや転圧の重機が入らないのです。そのため多くの時間や手間を割いて地盤改良工事をする必要が出てきます。
上の写真は打ち込み後の丸太(左)、これから打ち込む丸太(右)です。
鋼管杭の場合は直径約14㎝程の筒状の杭を硬い地盤の支持層まで打ち込み、それによって沈下を防ぎます。今回は先にも触れた通り、全く重機が搬入できませんでしたので松の丸太杭を打ち込み、その杭の摩擦で沈下を防ぎます。
鋼管杭もそうなのですが、打ち込んでしまうと腐食の原因(腐朽菌)となる酸素が地中にはないため、鋼管杭と同等の50年が対応年数と考えられています。※土木工事にも使用されています。また、自然素材ですので将来的にお墓を撤去処分することになった際には杭の撤去は要りません。
上の写真は打ち込みする際に液状化した泥が吹き出してきます
コンクリート基礎の乗る場所を密に打ち込んでいきます。
石を復元します。せっかくの機会ですので“かすがい”や“L字プレート”などの金物で補強もしておきましょう!
修繕が進みました。隣のお墓はまだ沈下したままですのでどれだけ傾いていたか分かりますね。
修繕工事が完了しました!基礎からやり直しましたのでこれでもう心配は要りませんね。
御影石の立派な石ですので風化の心配もありません。代々末長く使っていただければ嬉しいです。
お墓の傾き まとめ
もしもお墓の傾きが気になったら
- 石塔だけが傾いているか確認
- 外柵まで傾いているか確認
- 基礎が割れていないか確認
- 昔はどんな土地だったのか確認
- そんな施工方法が最善か、お近くの石材店さんに相談しよう